就活を語ろう
広義の社会保険と呼ばれる健康保険、厚生年金、雇用保険については、法令上二カ月と一日を超える就業でない限り、派遣会社および派遣社員が負担する義務はない。
つまり、二カ月以下の契約であれば発生しないものである。
社会保険は労使折半となっているため、利幅を多く確保するために、長期契約であってもいったん二カ月で契約を切り、就業三カ月目から社会保険に加入するといった方法を採用している。
ただし、同一の派遣会社で再雇用の場合はこれに該当しない(契約終了後、次の契約から1日も開かずに締結する場合、社会保険が継続するため)。
有給休暇は労働基準法の規定(第三十九条)に準じ、六カ月以上の連続した就業実績がなければ付与されない。
有給休暇が与えられる場合は、当然ながら派遣会社が契約時間分の給与を負担することになっている。
この仕組みも、派遣会社が有給休暇を取らせたがらない原因の一つになっている。
一般的に、派遣会社は福利厚生に負担した金額と、派遣社員への「支払」を足したものを「原価」として「請求」金額から引き、その残りを粗利益(売上総利益)として計上する(通勤交通費を支給している場合は、これも原価に加えそして、これらすべての出費を差し引いたものが、三の営業利益となり、これが企業活動を行なうために必要な投資に使われることになる。
したがって、派遣社員に支払われる金額は、派遣先にいくら「請求」できるか、また、そこからどれだけ「儲け」が発生するかによって決まるわけである。
通常の場合、利益率は三〇〜四〇パーセント程度とされている(ここでいう利益は粗利益をさす)。
派遣先に請求した金額の六〇〜七〇パーセントを派遣社員に支払い、残りを利益として確保するが、この利益率は最終的に残る営業利益をどの程度確保するかによって変動するものである。
薄利で考えれば営業利益はわずかでもよいのだが、将来への投資もできないようでは企業として成り立たない。
それでなくとも、競合他社やコスト削減などで請求金額を低く設定しなければならない場合も多い。
その中でできる限りの利益を確保しようと、収益性の高い設定をめざしてヘビの派遣会社も懸命になっている。
その結果、薄利にならざるを得ない契約が一方にあれば、他方でそれを補うために、取れるところからはいくらでも取ろうということになる。
実際に、利益率が五〇パーセントを超える案件も存在するのである。
これは、派遣先が契約金額に関して無知だからということではない。
ほとんどの場合、派遣先には派遣社員を採用するための予算枠があり、支払の想定値というものが存在している。
あとは、その想定値の範囲内で派遣会社の営業と交渉し、金額を決定するのである。
従って、ここでは両者の交渉力がモノを言そういったプロセスを経て契約を結んだら、派遣先は派遣会社が派遣社員にいくら支払っているのかなど、考えることはない。
前述のように、派遣社員はあくまでも派遣会社と雇用関係にあり、派遣先はそれらを決定する権利をもたないからである。
派遣会社は登録している派遣社員に対し、時給いくらならOKなのかという双方が納得のいくラインを引き、時給を決定する。
しかし、その支払金額は当然のごとく派遣先への「請求」金額によって決められることが多く、「請求ありき」の実態があるのも事実である。
このように、派遣会社にとっては「請求」金額が最大の関心事であり、派遣社員への待遇もこれに左右されやすい、ということは否定できないのが現状である。
実際に派遣社員を派遣先に提供し、勤務実績や給与などを管理しているのであれば、派遣会社の利益率がどのくらいであっても問題はない。
極端な話、九〇パーセントの利益率があったとしても違法とは言えないのである。
人材派遣は、派遣社員と労働契約を締結しており、中間搾取の関係のような賃金だけを支払っているわけではない。
中間搾取とは業務に関知せず、業者を仲介しただけで利益を取ろうとする行為を指すものであり、労働基準法の第六条の禁止事項になっている。
しかし、普ちんと労務管理をしている場合は、この禁止条項に抵触するものではない。
もちろん、派遣会社の利益率が高ければ高いほど、派遣社員の収入は低く抑ぇられてしまう。
利益率は最低限に抑え、派遣社員の待遇をよくしてあげられないのか、と考える人もいるだろう。
しかし、そうは簡単にいかない側面がある。
前述したように、請求金額については営業との交渉によって決まるものであり、業種や職種、業務量などにほとんど差がない場合にも、大きな差異が出てくることがある。
企業の業績や収益、また、企業担当者の判断や予算枠の大小などの不確定要素によって、金額にバラつきが生じるのは止むを得ないことなのである。
金額のバラつきにまともに対応してしまうと、同じような仕事なのに支払う金額が大きく違うという現象が起こってくる。
同じ仕事なら、少しでも時給のよいほうを望むのが人情である。
たど、そうなると高収入の仕事に人気が集中して人材が大きく偏ってしまい、金額の低い仕事に人材を確保できなくなる。
誰でも、高収入の仕事を一度でもしてしまうと、同じような仕事を低い時給で受けようとは思わなくなるからだ。
そのような現実もあるため、派遣会社はいたずらに利益率を高く設定し、秦利を食っているとは一概に言えないのである。
確かに、利益率の決定には透明性に欠けるところがある。
しかし、妥当性はなければならない。
最初に「請求ありき」のような支払金額決定のプロセスではなく、この派遣社員だからこれだけの金額になる、というふうに能力給的な考え方をもつべきである。
例えば、派遣社員の評価制度を設け、それに応じた金額設定を行なうべきである。
保有している資格(特定の資格が必要な業務の場合は重要視される)などを考慮してはどうか。
これらを制度化して、派遣先、の請求金額に左右されないような支払決定の仕組みが必要である.しかし、そのためにも利益率の確保に懸命とならなければならず、構造的な「矛盾」と利益の「還元」をいかに両立させられるかが、人材派遣の事業における宿命とも言える。
それゆえ、小手先の工夫だけでなく、既成の枠組みを超えた新しいビジネスモデルの構築と、派遣社員の管理体制の強化が今後の課題であると考えている。
派遣会社は、人材を派遣して労働サービスを提供する一方で、これ以外の専門領域、進出する場合も多くなってきている。
特に、企業のニーズによって業務そのものを請け負い、自社の派遣ノウハウを使って対応するケースが目立つ。
これは、いわゆる業務委託(または請負)契約を意味するアウトソーシングである。
アウトソーシングとは、ある企業の業務の一部か全部を、一つのパッケージにして特定の業者、委託する契約形態を指す。
しかし残念なことに、派遣会社はこのアウトソーシングという契約形態にまだあまり慣れていない。
中にはアウトソーシングの専門部署を設けたり、別会社として独立させて対応するところもあるが、歴史は浅く、実績もそれほど多くないのが現状である。
長年、派遣ビジネスで培ってきたノウハウも、簡単にアウトソーシングに転換できるものではない。
それは、契約形態の違いによって、派遣会社としての取り組みが大きく異なるためである。
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